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平成30年度バックナンバー

第7号(平成30年8月8日配信)

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◇◆ 大学入試センターメールマガジン 第7号 ◆◇

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【目次】
◇巻頭言
◆新テストニュース
◇試験を作る、考える
◆試験問題企画官リレートーク
◇関連リンク
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◇巻頭言

〔大学入試センター理事 浅田和伸〕

 6月に「『大学入学共通テスト』における問題作成の方向性等と
本年11月に実施する試行調査(プレテスト)の趣旨について」を
公表しました。センターとしては、検討・準備状況についてもできる限り
最新の情報を明らかにし、関係者の方々にお伝えしていきたいと考えて
います。今回の資料もその一環です。ぜひ御活用ください。
(センターHP⇒http://www.dnc.ac.jp/news/20180618-01.html
 平成31年1月に実施する「大学入試センター試験」に向けて、
例年通り、7月に全国7地区で高校関係者の方々を対象とする「説明
協議会」を開催しました。(一部の地区については「平成30年7月
豪雨」の影響を考慮し追加開催。)8月後半からは、センター試験を
利用している大学関係者の方々を対象とする「連絡協議会」を開催します。
センター試験は皆様方の多大な御尽力、御協力のお蔭で成り立つものです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
 大学入試センター研究開発部の南谷和範准教授が、ヒューマンインタ
フェース学会の「2017年度コミュニケーション支援研究賞」を受賞
しました。表彰対象となった発表の演題は「視覚障害者が使用可能な
3Dデータ製作手法の探索」です。センターの研究開発部は少人数ですが、
大学入学者選抜等に関わる重要な調査研究に取り組んでいます。
(センターHP⇒http://www.dnc.ac.jp/news/20180626-01.html

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◆新テストニュース

平成29年度試行調査の分析結果について

 大学入試センターでは、大学入学共通テストの導入に向けて、マーク式
問題を含め、知識の深い理解と思考力、判断力、表現力を一層重視した
問題作成の工夫・改善を行い、解答状況等を分析するとともに、記述式
問題における形式面・内容面にわたる正答の条件のあり方や採点体制、
採点期間等について検証するため、高校生を対象とする試行調査(プレ
テスト)を平成29年11月及び平成30年2月に実施しました。

<平成29年11月試行調査実施科目>
 ①記述式+マーク式:国語、数学①(数学Ⅰ・数学A)
 ②マーク式:数学②(数学Ⅱ・数学B)、地理歴史(世界史B、日本史B、
  地理B)、公民(現代社会)、理科(物理、化学、生物、地学)
<平成30年2月試行調査実施科目>
  マーク式:英語(筆記(リーディング)及びリスニング)

 試行調査の実施過程や実施結果については、各科目の問題構成、設問数、
内容等の在り方や、記述式問題の正答の条件の設定、採点、成績表示の
在り方、マーク式を含めた成績表示の在り方等の観点から分析・検討を
行い、公表しています。
 分析・検討結果の詳細については以下のURLを参照してください。

<平成29年度試行調査>
http://www.dnc.ac.jp/daigakunyugakukibousyagakuryokuhyoka_test/pre-test_h29.html

 今回の試行調査で出題された問題は検証のためのものであり、その問題
構成や内容が必ずしもそのまま2020年度からの大学入学共通テストに受け
継がれるわけではありません。実際の大学入学共通テストの問題構成や
内容等については、平成30年11月に改めて実施する試行調査の結果等を
踏まえて更に検討を進めることとしています。

 なお、平成30年11月には、実施面の確認及び、上述の分析結果を踏まえた
試行調査を実施することとしています。皆様の御理解と御協力をよろしく
お願いいたします。

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◇試験を作る、考える

『受験上の配慮』をめぐって

〔大学入試センター研究開発部 南谷和範〕

1. 「受験上の配慮」とは
大学入試センター研究開発部では、「受験上の配慮」の研究を進めて
います。受験上の配慮とは、病気・負傷や障害等のために、受験に際し
特別な配慮を希望する志願者に対して行う対応のことです。
例えば、視力に制約のあるいわゆる弱視者は、一般に使われているサイズ
の文字では読むことができない場合があります。
こうした人たちのためには、拡大文字問題冊子と呼ばれる文字サイズを
拡大した試験問題が必要となります。
さらに、一層重度の視覚障害のある人は、紙に印刷された文字を目で見て
読むことができません。
こうした重度の視覚障害のある人は、一般に配付される試験問題冊子を
渡されても全く読むことができないわけです。
そこで、試験問題を点字で印刷した点字問題冊子による出題と点字による
解答という対応(配慮)が行われます。

以上は問題冊子に注目した場合の配慮が必要な事例です。
冊子以外でも、たとえば車いす使用者には入室できる試験室に制約があり、
試験室設定に配慮が必要になります。
重度の聴覚障害のある人にリスニング試験を課すのは適当とは言えず、
聴力によっては免除が妥当な配慮となります。

上記の特別問題冊子を含め、センター試験で実施している諸配慮とその
申請方法については、センターが『受験案内』とともに配付している
『受験上の配慮案内』に掲載されています。
平成31年度センター試験の『受験上の配慮案内』は7月から配付を始めて
います。
http://www.dnc.ac.jp/center/shiken_jouhou/h31.html
から閲覧やダウンロードもできます。適宜ご利用下さい。
また、配慮についての問い合わせは随時受け付けていますので、
『配慮案内』掲載の連絡先までお問い合せ下さい。

2. 2系統の配慮研究
さて、配慮が『受験上の配慮案内』に掲載され既に実施されているなら、
研究開発部において配慮を研究するということにはどういう意義がある
のでしょうか?
ここでは、配慮研究の二つの重要な活動を紹介しておきます。

一つ目は公平性担保と現実的対策の導出です。
上述したように、弱視者にとっては拡大文字、重度視覚障害者にとっては
点字での出題が配慮として必要となるわけですが、これらの文字の読みは
一般のそれと比べて時間がかかることが知られています。
だとすると試験時間の延長が必要となるわけですが、この延長倍率を
どの程度に設定するかは試験の公平性を考える上で重大な課題となります。
他方で、試験日程の制約があり、試験時間の延長に限界があることも
否定しがたいです。
こうした公平性の要求と実施上の制約という問題は、時間延長に限らず
受験上の配慮を考える上で必ずと言っていいほど付きまとう問題です。
諸要素を勘案し、公平性を害さない範囲で機能する科学的裏付けのある
配慮のやり方を案出する、これが第1の課題となります。

一つ目が漸進的・発展的な配慮整備の研究だとすると、二つ目にいわば
開拓的、構想的な配慮開発と言えるようなタイプの研究があります。
こちらは、受験者や社会の新たなニーズを見据えながら、これまで存在
しなかったような配慮の方法を新規に創出していく活動となります。
具体的には、たとえば現在タブレットデバイスを用いた試験問題の閲覧
環境の開発に取り組んでいます。
タブレットデバイスを用いれば試験問題の文字サイズ、フォント、
配色などの表示を相当な自由度で変更できます。
また、試験問題の音声読み上げも可能です。
こうした機能を活用すれば、発達障害の一種で近年注目されている
読字障害(ディスレクシア)のある人や弱視者にとって有用な配慮が
実現できます。
このタブレット配慮の詳細については、私のいただいている科研費研究と
東京大学の文科省補助事業の共催で実施する「入試のIT配慮シンポジウム
~障害のある受験者のための入試配慮充実を目指して」でお話しする予定
です(9月28日)。
このメールマガジンが届く頃には、シンポジウムの案内が「障害と高等教育
に関するプラットフォーム形成事業」ホームページ(https://phed.jp
に掲載される予定です。ご興味のある皆様の参加をお待ちしています。

3. 一言 ―障害のある受験生の皆さんへ―
受験上の配慮は、障害のある人が試験に取り組みやすい環境を確保する
ために、ひいては高等教育へのアクセスが阻害されないために行われる
ものです。
筆者のような研究をしていると、突然の受傷で大学進学を諦めたという
話を聞くこともあります。
障害に伴う急激な環境の変化の中で、受験・進学プランを構築することは
決して簡単ではありません。
しかしながら、十分な学力を持ち合わせているのに、それを育みその後の
人生で生かすための場―高等教育―に背を向けてしまうことは、大変
残念なことです。
その結果として将来に与える影響・制約は、ぬぐいがたいものがあります。

他人事で月並みなことを言うように聞こえてしまうかもしれませんが、
やはり「諦めるのはまだ早い!」と申し上げたい。
障害によって、取り組める内容や取り組み方、特に時間のかけ方には
否定できない影響があります。
しかし、それは何かを全面的に諦めなくてはいけない、人生の方針を
180度転換しなくてはいけないということを意味するものではありません。
たとえば大学進学についていえば、当初の計画通りとはいかなくても、
進学先の調整や受験形態の変更を試みることでいろいろな可能性が
開けてきます。
幸い、最近では障害のある児童・生徒の大学進学をエンカレッジする
活動も活発になってきています。
上記のシンポジウムではそういった活動も紹介する予定です。
また、既に説明したようにセンター試験に関しても『配慮案内』に加えて、
事前の問い合わせも受け付けています。
なにがしかのアイデアが見つかるかもしれません。活用下さい。

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◆試験問題企画官リレートーク

「いま、思うことと想うこと」

〔大学入試センター 新テスト実施企画部
 試験問題企画官(化学担当)〕

 学校での12月と言えば、センター試験対策と銘打った問題集を、時間の
限りこなしていくというものが恒例でしたが、こうして日々試行調査
(プレテスト)の問題を見ていると、例えば、実験レポートを一度も
書いたことがない生徒が、実験器具の実物を一度も見たことも使った
こともない生徒が、果たして得点できるだろうかとよく頭をよぎります。
生徒が、新たに始まる共通テストで高得点をとるためには、生徒自ら、
その科目を学ぶことが「楽しい」「好きである」と率直に言える状態で
あることが絶対に必要ではないかと思います。
 「テストとは既にある能力を測るためのもので、テストが先で学習の
改善を促すのは逆だ」というある大学教授の新聞記事を最近目にした
ばかりですが、私が思い描く理想は、難解に見える課題に対して、学習
した基本的な知識や技能が拠り所となって、次々と辿っていくと暗雲が
無くなり視界がぱっと開くように、想定外に解けてしまう。うれしくて、
ますます化学を勉強したくなる。そういう展開になる問題です。しかし、
部活動で本気で練習もしないで公式試合に出ても、プレーする方も見る
方も辛いだけのように、本番で生徒に辛い思いをさせるわけにはいきません。
だから、学校現場では共通テストに向けて教師の授業改善、生徒の学習に
対する意識改善を推進することが急務です。数か月前までチョークを
持っていた私は、声高に言いたくなります、「今すぐ舵を切って、そして
全速力で」と。(別問題として学校の多忙化がありますが。)
 「例年通り」「多くのところで実施されている」など会議でよく聞く
参加者に安心を与える言葉ではなく、「これまでとは違って」「未来を
見越して」などの言葉を前面に使える入試改革のこの時期に、こちらで
働く機会を与えられたのは大変重責ですが、貴重で光栄なことでもあります。
生徒、教師、その他関係する全ての人にとっていい出会いとなるような、
化学の魅力が詰まった問題作成に向けて、精進しなければならないと
思っています。

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◇関連リンク

教科「情報」におけるCBTを活用した試験の開発に向けた問題素案の
募集について(平成30年7月17日)
http://www.dnc.ac.jp/news/20180717-01.html

平成31年度大学入学者選抜大学入試センター試験説明協議会を
開始しました(平成30年7月10日)
http://www.dnc.ac.jp/news/20180710-01.html

平成31年度大学入試センター試験「受験案内」「受験上の配慮案内」を
掲載しました(平成30年7月9日)
http://www.dnc.ac.jp/center/shiken_jouhou/h31.html

南谷准教授(研究開発部)が「ヒューマンインタフェース学会 
コミュニケーション支援研究賞」を受賞しました。(平成30年6月26日) 
http://www.dnc.ac.jp/news/20180626-01.html

第6号(平成30年6月13日配信)

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◇◆ 大学入試センターメールマガジン 第6号 ◆◇

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【目次】
◇巻頭言
◆新テストニュース
◇テストは語る~入試統計を読み解く~
◆試験問題企画官リレートーク
◇関連リンク
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◇巻頭言

〔大学入試センター理事 浅田和伸〕

 大学入試センターにも「誕生日」があります。昭和51年に前身の
「国立大学入試改善調査施設」が全国共同利用施設として東京大学に
設置され、翌昭和52年(1977年)5月2日、国立大学設置法の改正に
より「大学入試センター」が発足しました。このため5月2日を
「創立記念日」としています。
 爾来、昭和54年(1979年)1月から「共通第1次学力試験」、
平成2年(1990年)1月から「大学入試センター試験」が毎年度行われ、
現在はセンター試験の実施と並行して2020年度(2021年1月)からの
「大学入学共通テスト」に向けた準備を進めています。大勢の関係者の
御努力により長年積み重ねられてきた貴重な蓄積を活かしつつ、
これからも期待と信頼に応えていかねばと考えています。
 その「大学入学共通テスト」の関係では、本年2~3月に実施した
試行調査(外国語科(英語)、受検上の配慮(点字問題))の結果を
5月30日に公表しました。
 5月24日(木)~26日(土)の3日間、電気通信大学(東京都調布市)
を会場に、センターと同大学との共催で「平成30年度全国大学入学者選抜
研究連絡協議会大会(第13回)」を開催しました。3つの全体会、8つの
セッションに分かれての研究会に多数の方々が御参加くださり、熱心な
研究協議や意見交換が行われました。御登壇、御発表、御来場いただいた
皆様、また企画や準備に当たっていただいた企画委員会、電気通信大学の
皆様、本当にありがとうございました。
 なお、試行調査(平成30年2月実施分)の結果及び今年度の入研協大会に
ついては、いずれもセンターのホームページに掲載していますので、御参照
ください。


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◆新テストニュース

英語4技能評価と「大学入試英語成績提供システム」

平成29年7月に文部科学省が公表した「大学入学共通テスト実施方針」では、
高等学校学習指導要領における英語教育の抜本的改革を踏まえ、大学入学者
選抜においても「聞く」「読む」「話す」「書く」の4技能を適切に評価
するため、共通テストの枠組みにおいて、現に民間事業者等より広く実施
され一定の評価が定着している資格・検定試験を活用することとされました。
これを具体化するための仕組みとして、大学入試センターに「大学入試英語
成績提供システム」を設けることとなりました。このシステムへの参加申込
のあった資格・検定試験について、今年の3月に参加要件の確認結果を公表
しました。

【参考】「大学入試英語成績提供システム」の参加要件確認結果について
http://www.dnc.ac.jp/news/20180326-02.html

大学入試センターでは現在、文部科学省や関係団体等と連携しながら
システムの構築に向けた準備を進めています。
文部科学省でも、受検生の受検機会の確保、利便性の向上や経済的負担の
軽減を図るため、各実施主体に対し、実施会場の確保や検定料の配慮に
努めるよう要請しています。また、さらに多くの地域における実施や
検定料の配慮を求めていく必要があるため、各地域の実態に即して
各資格・検定試験へのニーズを把握するべく、全国の高等学校等に対し
調査を行っているところです。
大学入試センターとしても、このシステムが大学入学者選抜における
英語4技能評価の活用の促進につながるよう努めていきたいと考えて
います。
皆様方の御理解、御協力をお願い申し上げます。


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◇テストは語る~入試統計を読み解く~

「言語運用力」と「数理分析力」を測る試験の開発

〔大学入試センター研究開発部 椎名久美子〕

 「言語運用力」と「数理分析力」試験は、大学で学ぶために必要な
学力を、教科・科目別ではない試験で測ろうとするもので、AO入試や
推薦入試による大学入学者の割合が全入学者の4割を超えている状況を
踏まえて、研究開発部が開発を進めているものです。「言語運用力」は、
文章から必要な情報を読み取り、その情報を運用して知的活動に結び
つける能力と定義しています。「数理分析力」は、数理科学の基本的
概念や法則などを理解し、表現・考察することで、問題を解決する能力
と定義しています。

 AO入試や推薦入試などの多様な志願者が集まる状況では、大学で学ぶ
ために必要な学力を、履修科目による有利・不利が生じないように把握
する必要が出てきます。そこで、入学後に学ぶ内容や入学者に求める学力
に応じた「言語運用力」や「数理分析力」の問題をそれぞれの大学が作成
できるよう、問題の作成方法を文書化する研究を進めています。

 一般に、新しい試験を開発する際には、測定しようとする能力を
どのような枠組みで捉えるかを検討して、試作問題を作成し、それらの
試作問題を想定に近い受験者に解いてもらって解答データを収集して
分析します。測定しようとする能力が本当に測れているかを、様々な
方向から分析をして確認した上ではじめて、その能力を測る試験として
名乗ることができるのです。

 「言語運用力」と「数理分析力」についても、収集した解答データを
用いて問題の難しさや識別力(注)を分析すると共に、各問題の得点
データの多重対応分析によって問題間の関係を視覚化することで、測ろう
とする能力が反映された試験になっているかを検討しました。それらの
検討を経て、「言語運用力」と「数理分析力」の問題作成の「手引き」
が作成されました。現在、「手引き」に基づいて同じコンセプトの問題を
作成できるかを確認するべく、いくつかの大学に協力を依頼して、「手引き」
に基づく試作問題や「手引き」で加筆が必要な点についての意見を収集して
いるところです。

(注)識別力:その問題が、測ろうとする能力の高い人と低い人を区別できる度合い


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◆試験問題企画官リレートーク

「骰子(さい)は投げられた」

〔大学入試センター 新テスト実施企画部
 試験問題企画官(世界史担当)〕


 数年前まで県の教育センターに勤め、主に教員研修を担当していた。
様々な研修や研究に携わる中、高等学校地理歴史科・公民科の年次研修
(初任者から10年経験者までが対象)には必ず関わってきた。
 研修では、「授業で生徒を失望させない」を合言葉に、教員自身が
生き生きと授業をするための準備や方法、そしてうまくいった経験談
などを互いに出し合い共有した。また、時間の許す限り受講者の悩みに
耳を傾けた。研修はそれなりに盛り上がったが、研修が終わって会場を
後にするとき、毎年のように言われる言葉があった。「先生はそう言い
ますが、うちの学校では受験に関係ない授業はできません。」彼らに
とって教員が魅力を感じる授業(=生徒にとっても魅力ある授業)は、
受験勉強とは別物だった。
 多くの高校生にとって、いわゆる社会科の勉強は大変であり、とりわけ
世界史は複雑で分かりづらく、できれば避けて通りたい科目であることを、
担当者の多くは自覚している。かく言う私も、現場では教科・科目の魅力
を十分に伝えきれず、テストで高得点を挙げて自信を持たせることだけが、
目の前の生徒をつなぎ止める方策だった。もちろん、点数を取らせる指導が
悪いとは思わないが、それだけでは、生徒はやがて教科から離れ、教員からも
離れていく。
 年次研修では、丸暗記だけを奨励するかのような授業からの脱却について、
受講者とともに学びあう姿勢を貫いた。そして、自身の力不足は棚に上げ、
いつからか受講者に呼びかけるようになった。「先生になった頃を思い出そう。
どんな授業をしたかったのか、教科を通して生徒にどんなことを伝えたかった
のか。」若手も中堅も、科目の面白さを伝えたいという思いに変わりはない
ようだった。いつか彼らの思いが叶うことを願った。
 大学入試センターに着任し、2か月が過ぎようとしている。新テストが
一つ一つ形になっていくのを見るにつけ、後戻りができないことを実感し、
身の引き締まる思いがする。同時に、こうして大学入試の画期に立ち会える
ことに喜びを感じる。新テストの下で、魅力ある授業が受験勉強に役立つ日
も近い。多くの地歴公民科教員が、生徒とともに教室で生き生きと輝く日が
待ち遠しい。


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◇関連リンク

平成30年度全国大学入学者選抜研究連絡協議会大会(第13回)を開催しました
(平成30年6月12日)
http://www.dnc.ac.jp/news/20180612-01.html

「平成31年度大学入学者選抜大学入試センター試験実施要項」を掲載しました
(平成30年6月6日)
http://www.dnc.ac.jp/center/shiken_jouhou/h31.html

試行調査(平成30年2月実施分)の結果報告について
(平成30年6月1日) 
http://www.dnc.ac.jp/news/20180601-01.html


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第5号(平成30年4月11日配信)

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◇◆ 大学入試センターメールマガジン 第5号 ◆◇

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【目次】
◇巻頭言
◆新テストニュース
◇テストは語る~入試統計を読み解く~
◆試験問題企画官リレートーク
◇関連リンク
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◇巻頭言

〔大学入試センター理事 浅田和伸〕

 新年度、新たな一歩を踏み出された方もいるでしょう。
 春は出会いの季節。皆様にとって充実した年度になりますように。
 1月に実施した平成30年度センター試験の成績の大学への提供件数は、
3月末現在で約166万件と、前年度より約10万件多くなっています。
 これからも大学、高校等の関係者、また社会からの信頼に応えられるよう
努力してまいります。
 3月にはいくつかの重要なプレス発表を行いました。
 一つは2020年度からの大学入学共通テスト導入に向けた試行調査の
関係で、昨年11月実施分の分析・検討結果と、今年2月実施分の結果
速報です。
 もう一つは、大学入試英語成績提供システムへの参加申込のあった
資格・検定試験についての参加要件の確認結果です。
 詳細については是非ホームページで御覧ください。
 なお、試行調査は今年度も11月に、大学を会場とし、10万人規模で
本番と同じ2日間にわたり実施する予定です。
大学、高校の関係者におかれては、何卒ご協力をお願い申し上げます。

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◆新テストニュース

「大学入試英語成績提供システム」参加要件の確認結果を公表しました。

 平成29年7月に文部科学省が公表した「大学入学共通テスト実施方針」
では、大学入学者選抜においても、「聞く」「読む」「話す」「書く」の
4技能を適切に評価するため、共通テストの枠組みにおいて、現に民間
事業者等により広く実施され、一定の評価が定着している資格・検定試験を
活用するとされました。
 このたび大学入試センターにおいて、申込のあった資格・検定試験が
「大学入試英語成績提供システム」の参加要件を満たしているか否かの
確認を行い、その結果を公表しました。どの資格・検定試験が対象と
なったかについては、下記URLをクリックしてください。

【参考】「大学入試英語成績提供システム」の参加要件確認結果について
http://www.dnc.ac.jp/news/20180326-02.html

 2020年度に高校3年生になる皆さんは、受験を希望する大学の募集要項を
見ながら、各大学において「大学入試英語成績提供システム」による英語の
資格・検定試験の成績が求められている場合は、高校3年生の4月から
12月において、いずれかの資格・検定試験を受検する必要があります。
そのうち2回までの成績データが、本システムを通して大学入試センターに
届きます。大学入試センターは、皆様からの希望に応じて出願する大学に
成績データを提供します。
 このシステムにより、従来は皆さんが各資格・検定試験実施団体から
取り寄せていた成績証明書発行に必要な手数料や手間などの負担が軽減
されます。また証明書発行の遅延による出願取り消しなどの不安も解消
されることになります。

 皆さんが安心してこれらの試験に臨めるよう、センターは今後、万全の
準備を整えます。
これからも、大学入試センター公式ホームページや本メールマガジン等を
通して、分かりやすく情報提供を行っていきたいと考えています。

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◇テストは語る~入試統計を読み解く~

〔人工知能による短文記述採点〕 研究開発部 石岡恒憲

 人工知能(AI)が将棋でトップ棋士を撃破したり、東ロボ(「ロボット
は東大に入れるか」プロジェクト)では模試で5教科総合偏差値57.1を
獲得したり、アメリカではIBMワトソン研究所のAIがクイズ番組で歴代の
チャンピオン2名に圧勝したといったニュースは皆さんお聞きのことと
思います。

 そんな中、今年1月16日に「アリババのAI、読解力テストで人間を超える」
といったセンセーショナルなニュースが飛び込んできました。もはや人工
知能が文章を理解し、この技術を用いれば記述式問題の採点ができるのでは
ないかと思われている方も少なくなかったでしょう。

 ここでは、このニュースの意味を
1.どのようなテストセットを使って評価されたのか?
2.クイズとはどこが違うのか
3.評価基準はなにか
といった観点から説明しようと思います。

1.AIシステムの性能を測定するコンペで用いたのはスタンフォード質問
応答データセット(SQuAD)と呼ばれるデータセットです。クラウドワーカー
がウィキペディアから作成したもので、500以上の記事、10万以上の質問応答
のペアから構成されています。
2.たとえば「ランキンサイクル (Rankine cycle;熱機関の理論サイクル)は
しばしば何と呼ばれますか?」という問いに対して、「カルノーサイクル
(Carnot cycle)」と答えます。答えの長さは最大で15ワードで、正解は
一つに限りません。正解は日付(例えば:19 October 1512、以下同じ)、
数値(12)、人名(Thomas Coke)、地名・国名(Germany)、その他、
実在するもの(ABC Sports)などの他、一般的な名詞句(property damage)
や副詞(quietly)、形容詞句(second-largest)、動詞句(returned to
Earth)や節(to avoid trivialization)などが含まれており、通常の
クイズ解答よりも解答タイプの範囲が広いことは指摘してよいでしょう。
3.評価基準としては、EMスコアとF1スコアと呼ばれる異なった2つの
指標が使われます。EMでは用意された正解に完全に一致した確率を表し
ます。F1スコアは情報検索で良く用いられる指標で、正確率と再現率の
調和平均です。アリババなどのAIロボットはEMでは人間を超えていますが、
F1スコアではいまだ超えていません。

 このAIプログラム評価は15ワード以内の比較的短い単語や句レベルの
解答について行われていましたが、実際の記述式問題ではそれより長い
単文や複文を判定しなくてはならないでしょう。ときには理解するのが
難しい(正解との)「含意」や「同義」の判定が必要になるでしょう。
 このようなことを考えれば、記述式問題の自動採点にはまだまだ難しい
課題が残っているように思います。もちろん、我々研究者はこのチャレン
ジングな課題(自然言語による意味理解とそれに基づく自動採点支援技術
の開発)について日々研究を進めています。どうぞご支援ください。

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◆試験問題企画官リレートーク

「最近驚いたこと」

〔大学入試センター 新テスト実施企画部
 試験問題企画官(英語担当)〕

 センター勤務がもうすぐ1年になります。情熱と誇りを持って日々の
業務を行う上司や同僚のご指導、ご支援に感謝しています。
 さて、ここでは、最近見聞きした話題で、私が驚いたことを記して
みたいと思います。
 まずは、「空飛ぶ自動車」実用化の話です。今年3月にジュネーブで
開催されたモーターショーでは、オランダの企業が、「空飛ぶ自動車」
を発表し、注目を集めました。来年から販売するモデルだというから
驚きです。海外では、「空飛ぶ自動車」の実用化を目指す企業が次々と
出てきており、日本でも、経済産業省が、今後、国内外の関係者から
意見を聞きながら、検討を進めていくと明言しています。夢のような話が
実現するのでしょうか。
 もう一つは、子どもたちの勉強方法についてです。ICT環境の改善により、
校内外でICT機器を活用する場面が増えてきました。知り合いの現役高校
教員の話によると、最近は、スマートフォンのアプリや動画をテスト
対策等に活用する子どもが急激に増えているというのです。単語等の
意味調べや反復学習はもちろん、学習の進捗状況を管理したり、他人の
自筆ノートをアプリで閲覧したりもするそうです。また、ある単元を解説
する動画がネット上に溢れており、相当利用されているという話です。
十年一昔と言いますが、隔世の感を禁じ得ない思いです。
 グローバル化の進展、人口減少、少子高齢化、そして急速に進む技術
革新が私たちの社会生活にもたらす変革はこれまでにないスピードと
インパクトで進行すると言われます。自分の目の前の仕事が、今の子ども
たちの将来に深く関わっていることを引き続き強く意識しながら職責を
果たしていきたいと思います。

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◇関連リンク

「大学入試英語成績提供システム」の参加要件確認結果について
(平成30年3月26日) 
http://www.dnc.ac.jp/news/20180326-02.html

試行調査(平成29年11月実施分)の結果報告について
(平成30年3月26日)
http://www.dnc.ac.jp/news/20180326-01.html

試行調査(平成30年2月実施分)の結果速報等について
(平成30年3月14日)
http://www.dnc.ac.jp/news/20180314-01.html

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