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◇◆ 大学入試センターメールマガジン 第7号 ◆◇
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【目次】
◇巻頭言
◆新テストニュース
◇試験を作る、考える
◆試験問題企画官リレートーク
◇関連リンク
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◇巻頭言
〔大学入試センター理事 浅田和伸〕
6月に「『大学入学共通テスト』における問題作成の方向性等と
本年11月に実施する試行調査(プレテスト)の趣旨について」を
公表しました。センターとしては、検討・準備状況についてもできる限り
最新の情報を明らかにし、関係者の方々にお伝えしていきたいと考えて
います。今回の資料もその一環です。ぜひ御活用ください。
(センターHP⇒
http://www.dnc.ac.jp/news/20180618-01.html)
平成31年1月に実施する「大学入試センター試験」に向けて、
例年通り、7月に全国7地区で高校関係者の方々を対象とする「説明
協議会」を開催しました。(一部の地区については「平成30年7月
豪雨」の影響を考慮し追加開催。)8月後半からは、センター試験を
利用している大学関係者の方々を対象とする「連絡協議会」を開催します。
センター試験は皆様方の多大な御尽力、御協力のお蔭で成り立つものです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
大学入試センター研究開発部の南谷和範准教授が、ヒューマンインタ
フェース学会の「2017年度コミュニケーション支援研究賞」を受賞
しました。表彰対象となった発表の演題は「視覚障害者が使用可能な
3Dデータ製作手法の探索」です。センターの研究開発部は少人数ですが、
大学入学者選抜等に関わる重要な調査研究に取り組んでいます。
(センターHP⇒
http://www.dnc.ac.jp/news/20180626-01.html)
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◆新テストニュース
平成29年度試行調査の分析結果について
大学入試センターでは、大学入学共通テストの導入に向けて、マーク式
問題を含め、知識の深い理解と思考力、判断力、表現力を一層重視した
問題作成の工夫・改善を行い、解答状況等を分析するとともに、記述式
問題における形式面・内容面にわたる正答の条件のあり方や採点体制、
採点期間等について検証するため、高校生を対象とする試行調査(プレ
テスト)を平成29年11月及び平成30年2月に実施しました。
<平成29年11月試行調査実施科目>
①記述式+マーク式:国語、数学①(数学Ⅰ・数学A)
②マーク式:数学②(数学Ⅱ・数学B)、地理歴史(世界史B、日本史B、
地理B)、公民(現代社会)、理科(物理、化学、生物、地学)
<平成30年2月試行調査実施科目>
マーク式:英語(筆記(リーディング)及びリスニング)
試行調査の実施過程や実施結果については、各科目の問題構成、設問数、
内容等の在り方や、記述式問題の正答の条件の設定、採点、成績表示の
在り方、マーク式を含めた成績表示の在り方等の観点から分析・検討を
行い、公表しています。
分析・検討結果の詳細については以下のURLを参照してください。
<平成29年度試行調査>
http://www.dnc.ac.jp/daigakunyugakukibousyagakuryokuhyoka_test/pre-test_h29.html 今回の試行調査で出題された問題は検証のためのものであり、その問題
構成や内容が必ずしもそのまま2020年度からの大学入学共通テストに受け
継がれるわけではありません。実際の大学入学共通テストの問題構成や
内容等については、平成30年11月に改めて実施する試行調査の結果等を
踏まえて更に検討を進めることとしています。
なお、平成30年11月には、実施面の確認及び、上述の分析結果を踏まえた
試行調査を実施することとしています。皆様の御理解と御協力をよろしく
お願いいたします。
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◇試験を作る、考える
『受験上の配慮』をめぐって
〔大学入試センター研究開発部 南谷和範〕
1. 「受験上の配慮」とは
大学入試センター研究開発部では、「受験上の配慮」の研究を進めて
います。受験上の配慮とは、病気・負傷や障害等のために、受験に際し
特別な配慮を希望する志願者に対して行う対応のことです。
例えば、視力に制約のあるいわゆる弱視者は、一般に使われているサイズ
の文字では読むことができない場合があります。
こうした人たちのためには、拡大文字問題冊子と呼ばれる文字サイズを
拡大した試験問題が必要となります。
さらに、一層重度の視覚障害のある人は、紙に印刷された文字を目で見て
読むことができません。
こうした重度の視覚障害のある人は、一般に配付される試験問題冊子を
渡されても全く読むことができないわけです。
そこで、試験問題を点字で印刷した点字問題冊子による出題と点字による
解答という対応(配慮)が行われます。
以上は問題冊子に注目した場合の配慮が必要な事例です。
冊子以外でも、たとえば車いす使用者には入室できる試験室に制約があり、
試験室設定に配慮が必要になります。
重度の聴覚障害のある人にリスニング試験を課すのは適当とは言えず、
聴力によっては免除が妥当な配慮となります。
上記の特別問題冊子を含め、センター試験で実施している諸配慮とその
申請方法については、センターが『受験案内』とともに配付している
『受験上の配慮案内』に掲載されています。
平成31年度センター試験の『受験上の配慮案内』は7月から配付を始めて
います。
http://www.dnc.ac.jp/center/shiken_jouhou/h31.htmlから閲覧やダウンロードもできます。適宜ご利用下さい。
また、配慮についての問い合わせは随時受け付けていますので、
『配慮案内』掲載の連絡先までお問い合せ下さい。
2. 2系統の配慮研究
さて、配慮が『受験上の配慮案内』に掲載され既に実施されているなら、
研究開発部において配慮を研究するということにはどういう意義がある
のでしょうか?
ここでは、配慮研究の二つの重要な活動を紹介しておきます。
一つ目は公平性担保と現実的対策の導出です。
上述したように、弱視者にとっては拡大文字、重度視覚障害者にとっては
点字での出題が配慮として必要となるわけですが、これらの文字の読みは
一般のそれと比べて時間がかかることが知られています。
だとすると試験時間の延長が必要となるわけですが、この延長倍率を
どの程度に設定するかは試験の公平性を考える上で重大な課題となります。
他方で、試験日程の制約があり、試験時間の延長に限界があることも
否定しがたいです。
こうした公平性の要求と実施上の制約という問題は、時間延長に限らず
受験上の配慮を考える上で必ずと言っていいほど付きまとう問題です。
諸要素を勘案し、公平性を害さない範囲で機能する科学的裏付けのある
配慮のやり方を案出する、これが第1の課題となります。
一つ目が漸進的・発展的な配慮整備の研究だとすると、二つ目にいわば
開拓的、構想的な配慮開発と言えるようなタイプの研究があります。
こちらは、受験者や社会の新たなニーズを見据えながら、これまで存在
しなかったような配慮の方法を新規に創出していく活動となります。
具体的には、たとえば現在タブレットデバイスを用いた試験問題の閲覧
環境の開発に取り組んでいます。
タブレットデバイスを用いれば試験問題の文字サイズ、フォント、
配色などの表示を相当な自由度で変更できます。
また、試験問題の音声読み上げも可能です。
こうした機能を活用すれば、発達障害の一種で近年注目されている
読字障害(ディスレクシア)のある人や弱視者にとって有用な配慮が
実現できます。
このタブレット配慮の詳細については、私のいただいている科研費研究と
東京大学の文科省補助事業の共催で実施する「入試のIT配慮シンポジウム
~障害のある受験者のための入試配慮充実を目指して」でお話しする予定
です(9月28日)。
このメールマガジンが届く頃には、シンポジウムの案内が「障害と高等教育
に関するプラットフォーム形成事業」ホームページ(
https://phed.jp)
に掲載される予定です。ご興味のある皆様の参加をお待ちしています。
3. 一言 ―障害のある受験生の皆さんへ―
受験上の配慮は、障害のある人が試験に取り組みやすい環境を確保する
ために、ひいては高等教育へのアクセスが阻害されないために行われる
ものです。
筆者のような研究をしていると、突然の受傷で大学進学を諦めたという
話を聞くこともあります。
障害に伴う急激な環境の変化の中で、受験・進学プランを構築することは
決して簡単ではありません。
しかしながら、十分な学力を持ち合わせているのに、それを育みその後の
人生で生かすための場―高等教育―に背を向けてしまうことは、大変
残念なことです。
その結果として将来に与える影響・制約は、ぬぐいがたいものがあります。
他人事で月並みなことを言うように聞こえてしまうかもしれませんが、
やはり「諦めるのはまだ早い!」と申し上げたい。
障害によって、取り組める内容や取り組み方、特に時間のかけ方には
否定できない影響があります。
しかし、それは何かを全面的に諦めなくてはいけない、人生の方針を
180度転換しなくてはいけないということを意味するものではありません。
たとえば大学進学についていえば、当初の計画通りとはいかなくても、
進学先の調整や受験形態の変更を試みることでいろいろな可能性が
開けてきます。
幸い、最近では障害のある児童・生徒の大学進学をエンカレッジする
活動も活発になってきています。
上記のシンポジウムではそういった活動も紹介する予定です。
また、既に説明したようにセンター試験に関しても『配慮案内』に加えて、
事前の問い合わせも受け付けています。
なにがしかのアイデアが見つかるかもしれません。活用下さい。
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◆試験問題企画官リレートーク
「いま、思うことと想うこと」
〔大学入試センター 新テスト実施企画部
試験問題企画官(化学担当)〕
学校での12月と言えば、センター試験対策と銘打った問題集を、時間の
限りこなしていくというものが恒例でしたが、こうして日々試行調査
(プレテスト)の問題を見ていると、例えば、実験レポートを一度も
書いたことがない生徒が、実験器具の実物を一度も見たことも使った
こともない生徒が、果たして得点できるだろうかとよく頭をよぎります。
生徒が、新たに始まる共通テストで高得点をとるためには、生徒自ら、
その科目を学ぶことが「楽しい」「好きである」と率直に言える状態で
あることが絶対に必要ではないかと思います。
「テストとは既にある能力を測るためのもので、テストが先で学習の
改善を促すのは逆だ」というある大学教授の新聞記事を最近目にした
ばかりですが、私が思い描く理想は、難解に見える課題に対して、学習
した基本的な知識や技能が拠り所となって、次々と辿っていくと暗雲が
無くなり視界がぱっと開くように、想定外に解けてしまう。うれしくて、
ますます化学を勉強したくなる。そういう展開になる問題です。しかし、
部活動で本気で練習もしないで公式試合に出ても、プレーする方も見る
方も辛いだけのように、本番で生徒に辛い思いをさせるわけにはいきません。
だから、学校現場では共通テストに向けて教師の授業改善、生徒の学習に
対する意識改善を推進することが急務です。数か月前までチョークを
持っていた私は、声高に言いたくなります、「今すぐ舵を切って、そして
全速力で」と。(別問題として学校の多忙化がありますが。)
「例年通り」「多くのところで実施されている」など会議でよく聞く
参加者に安心を与える言葉ではなく、「これまでとは違って」「未来を
見越して」などの言葉を前面に使える入試改革のこの時期に、こちらで
働く機会を与えられたのは大変重責ですが、貴重で光栄なことでもあります。
生徒、教師、その他関係する全ての人にとっていい出会いとなるような、
化学の魅力が詰まった問題作成に向けて、精進しなければならないと
思っています。
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◇関連リンク
教科「情報」におけるCBTを活用した試験の開発に向けた問題素案の
募集について(平成30年7月17日)
http://www.dnc.ac.jp/news/20180717-01.html平成31年度大学入学者選抜大学入試センター試験説明協議会を
開始しました(平成30年7月10日)
http://www.dnc.ac.jp/news/20180710-01.html平成31年度大学入試センター試験「受験案内」「受験上の配慮案内」を
掲載しました(平成30年7月9日)
http://www.dnc.ac.jp/center/shiken_jouhou/h31.html南谷准教授(研究開発部)が「ヒューマンインタフェース学会
コミュニケーション支援研究賞」を受賞しました。(平成30年6月26日)
http://www.dnc.ac.jp/news/20180626-01.html